チェーンの注油は、ただ油をかければ良い作業ではありません。むしろ、汚れたチェーンの上から油を足すだけだと、黒い汚れをさらに練り込んでしまい、チェーン、スプロケット、チェーンリングの摩耗を早めます。
金太郎でお客様に説明する時は、「油を差す作業」ではなく「掃除して、必要な場所だけ潤滑して、余分を拭き取る作業」とお伝えしています。
注油前に見るところ
- チェーンが黒くベタベタしていないか。
- ローラー部分に砂や細かい金属粉が付いていないか。
- ペダルを逆回転させた時にキュルキュル、シャリシャリ音がしないか。
- 雨の後や洗車後で、油分が流れていないか。
油を差す前に知っておきたいこと
チェーンオイルは、チェーンの外側を光らせるためではなく、ローラー内部の動きを助けるために使います。外側にベタベタ残すと、砂ぼこりを拾って黒い汚れになり、結果的にチェーンやギアを削る原因になります。
| やりがち | 起こること | 直し方 |
|---|---|---|
| 汚れたまま注油する | 油と砂で黒いペースト状になり、摩耗が進みやすい。 | 先にウエスやクリーナーで汚れを落とす。 |
| 外側に油を残す | ホコリを拾い、フレームや服も汚れやすい。 | 注油後にチェーン外側をしっかり拭く。 |
| スプレーを広く吹く | リム、ローター、タイヤに油が付く危険がある。 | ブレーキ周辺を避け、必要な場所へ少量ずつ入れる。 |
| 音が鳴ってからだけ差す | 乾いた状態で走る時間が長くなる。 | 雨天走行後や洗車後は早めに確認する。 |
チェーンの黒い汚れは、単なる泥ではなく、油、砂、削れた金属粉が混ざった研磨剤のようなものです。そのまま走ると、部品を少しずつ削っていきます。
手順1:まず汚れを落とす
軽い汚れなら、乾いたウエスでチェーンを包むように持ち、ペダルをゆっくり逆回転させるだけでもかなり落ちます。黒い汚れが強い時は、自転車用クリーナーやディグリーザーを使います。
ブラシは専用品が便利ですが、古くなった歯ブラシでも十分使えます。チェーンの外側だけでなく、ローラーの間、プレートのすき間、プーリー周りに汚れがたまりやすいです。
手順2:乾かしてから注油する
クリーナーを使った直後に油を差すと、油が薄まったり流れたりします。ウエスでよく拭き、できれば少し時間を置いてから注油します。水洗いした場合は、内部に水分が残りやすいので特に注意してください。
手順3:ローラーに1コマずつ少量
油が必要なのは、チェーンの外側ではなくローラーの内部です。チェーンの上からザーッとかけるのではなく、ローラー部分に1コマずつ少量を落とすのが基本です。
全部のコマに注油したら、ペダルをゆっくり回して油をなじませます。数分置くと内部に入りやすくなります。
手順4:外側の油は拭き取る
ここが一番大事です。外側に残った油は潤滑にはあまり役立たず、砂やホコリを呼びます。最後にウエスでチェーンを包み、表面のベタつきが少なくなるまで拭き取ります。
「せっかく油を差したのに拭いたらもったいない」と思われがちですが、外側は拭いて正解です。中に入った油が仕事をします。
オイルの種類
| 種類 | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| ドライタイプ | 晴れの日中心、街乗り、汚れを少なくしたい人。 | 雨に弱め。こまめな注油が必要です。 |
| ウェットタイプ | 雨の日、長距離、悪路、通勤で毎日乗る人。 | 汚れが付きやすいので拭き取りと掃除が大事です。 |
| ワックスタイプ | チェーンをきれいに保ちたい人、衣服の汚れを減らしたい人。 | 下地の脱脂が甘いと効果が出にくいです。 |
| セラミック系・高耐久系 | スポーツ走行、ロングライド、性能重視。 | 製品ごとに使い方が違うので説明書を確認します。 |
よくある失敗
- チェーンが汚れたまま油だけ足す。
- スプレーオイルをブレーキやリム、ローター付近に飛ばす。
- 差しすぎてチェーン外側がベタベタのまま走る。
- 雨の後に何週間も放置する。
- サビが出ているのに、油だけで直そうとする。
注油の目安
注油の目安は距離だけでは決めにくく、オイルの種類、天候、走り方、保管環境で大きく変わります。チェーンが乾いた音になった時、雨の後、洗車後、黒い汚れが増えてきた時に状態を確認します。
一般車や通勤自転車でも、チェーンが赤くサビる前に見ておくと長持ちします。サビが深い、固着している、伸びている場合は注油だけではなく交換の判断になります。
通勤で毎日使う場合も、交換時期を走行距離だけで決めず、チェーンの摩耗や損傷を確認します。注油の目安と、伸びや損傷による交換の判断は分けて考えてください。シマノのチェーン取扱説明書(PDF)にも、異常の点検と手入れの注意が記載されています。
店で相談してほしい状態
- ペダルを踏むとガリガリ、ゴリゴリ音がする。
- 変速が決まりにくい。
- チェーンがたるむ、外れやすい。
- チェーンやギアの歯が赤くサビている。
- 注油してもすぐ音が戻る。
こういう時は、チェーンだけでなくスプロケット、チェーンリング、プーリー、ワイヤー調整まで関係している場合があります。無理に乗り続けるより、一度見せてもらったほうが安く済むことも多いです。



