インテグラルヘッドとは
インテグラルヘッドは、ヘッドチューブまわりを太く、低く、すっきり見せるために広まったヘッドパーツの考え方です。大きなヘッドチューブの中にカップやベアリングを収め、アヘッド方式のステムと組み合わせて使います。
ただし「インテグラルヘッド」という名前は少し広く使われます。実際には、カップを圧入するロープロファイル系、ベアリングをフレームへ直接入れるインテグレーテッド系、カンパタイプ、クリスキング系などがあり、見た目が似ていても互換性がないことがあります。
ロープロファイルタイプ
ゼロスタックとも呼ばれます。カップをヘッドチューブ内へ圧入し、そのカップにベアリングを収めるタイプです。MTBやクロスバイクでよく見ます。
インテグレーテッドタイプ
フレーム側にベアリング受けが加工され、ベアリングを直接入れるタイプです。ロードバイクに多く、角度違いに特に注意が必要です。
カンパタイプ
外観はインテグレーテッドに似ていますが、ベアリング寸法や接触角が異なるため、一般的なISタイプとは別物として確認します。
クリスキング系・特殊系
ヘッドチューブ径やカップ高が独自寄りのものがあります。Columbus、1.5インチ、古い特殊規格などは、メーカー名より実測が優先です。
最初に見るのは名前ではなく構造
ヘッドパーツの確認は、商品名から入るより、実車の構造から見た方が間違いにくくなります。カップが外に出ているか、ヘッドチューブ内にカップがあるか、ベアリングがフレームに直接当たっているかを見ます。
| 略称 | 呼び方 | 見た目の目安 | 交換時の注意 |
|---|---|---|---|
| EC | External Cup | カップがヘッドチューブ外に出る。 | スタックハイトが増えます。古いMTBや一部の一般車系でも見ます。 |
| ZS | Zero Stack / Low Profile | カップはフレーム内。外からは低く見える。 | ヘッドチューブ内径、カップ外径、ベアリング寸法をセットで確認します。 |
| IS | Integrated | カップがなく、ベアリングがフレームに直接入る。 | フレーム側の受け角度とベアリング角度が合わないと使えません。 |
まずは「金属の受けがどこにあるか」を確認
金属カップが外へ出ている
フレームの上下から金属リングがはっきり見えるタイプです。まず横からヘッドチューブ全体を撮ります。
金属カップがフレーム内に隠れる
外側の出っ張りは小さいですが、中には別体のカップがあります。外観だけでISとは決めません。
カップがなく、ベアリングが直接入る
フレーム内側の斜面にベアリングが直接座ります。外した順番とベアリング刻印の写真が必要です。
旧規格名で見る代表的な違い
古い資料や部品名では、ロープロファイル、インテグレーテッド、カンパタイプ、クリスキングタイプ、コロンバスタイプといった呼び方が出てきます。これらは現在のEC/ZS/IS表記と完全に一対一ではなく、メーカーや年代で呼び方がずれることがあります。
| 旧来の呼び方 | 近い考え方 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ロープロファイルタイプ | ZS系 | カップをフレーム内へ圧入し、低いスタックにする。 | カップ外径とヘッドチューブ内径が合わないと入りません。 |
| インテグレーテッドタイプ | IS系 | ベアリングをフレームの受けへ直接入れる。 | ベアリング外径だけでなく、36度/45度などの角度を確認します。 |
| カンパタイプ | Hiddenset系 | 見た目はIS系に近いが、寸法と角度が別系統。 | IS用と混ぜるとガタ、重さ、異音につながります。 |
| クリスキングタイプ | Perdido系 | ロープロファイルに似るが、ヘッドチューブ径やカップ高が独自。 | 「44mmっぽい」ではなく実測が必要です。 |
| コロンバスタイプ | 特殊系 | 専用フレーム向けの特殊寸法。 | 通常在庫の汎用品で置き換えにくい場合があります。 |
ACBは角度まで見る
インテグラル系のカートリッジベアリングには、ACB、つまりアンギュラーコンタクトベアリングが多く使われます。ハンドルを回すだけでなく、ブレーキ時や段差で前後・上下方向の荷重を受けるため、ベアリングの当たり面に角度が付いています。
ここで大事なのは、外径や内径が近くても、接触角が違えば別物ということです。代表的には36度/45度、36度/36度、45度/45度などがあり、フレーム側やクラウンレース側の受け面と合わないと、入っているように見えても正しく支えられません。
| 代表例 | 角度の目安 | 間違えた時に出やすい症状 |
|---|---|---|
| Cane Creek系 | 36度 / 45度 | プリロードをかけてもコツコツする、早く傷む。 |
| TH系 | 36度 / 36度 | 受け面が合わず、回転が重い、ガタが残る。 |
| Campagnolo系 | 45度 / 45度 | IS用と思って入れると高さや当たりが変わる。 |
外したベアリングで店へ伝える4項目
側面の刻印を撮る
英数字や角度表記が読めるように、表・裏・横から明るく撮影します。
外側から外側まで
ベアリングの一番外側の端から、反対側の端までの直径です。
中央の穴の直径
フォークの軸が通る中央穴を、内側の端から反対側の内側まで測ります。
厚みと斜めの当たり面
厚みも必要です。接触角は見た目で決めず、刻印・現物・メーカー資料で確認します。
代表寸法の見方
下の表は代表例です。実際の注文や交換では、メーカー資料、現物刻印、実測を必ず照合します。
| タイプ | 代表名 | サイズ | ヘッドチューブ内径 | カップ外径 | カップ高 | ベアリング外径 | ベアリング内径 | 高さ | 角度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Low Profile | ZS系 1インチ | 1" | 41.4mm | 41.45mm | 約12mm | 38.0mm | 27.15mm | 6.5mm | 36度 / 45度 |
| Low Profile | ZS系 1-1/8 | 1-1/8" | 44.0mm | 44.05mm | 約8-12mm | 41.0mm | 30.15mm | 6.5mm | 36度 / 45度 |
| Integrated | IS系 1インチ | 1" | 38.2mm | なし | なし | 38.0mm | 27.15mm | 6.5mm | 36度 / 45度 |
| Integrated | IS系 1-1/8 | 1-1/8" | 41.2mm | なし | なし | 41.0mm | 30.15mm | 6.5mm | 36度 / 45度 |
| Hiddenset | カンパ系 | 1-1/8" | 42.0mm | なし | なし | 41.8mm | 30.5mm | 8mm | 45度 / 45度 |
| Perdido | クリスキング系 | 1-1/8" | 44.45mm | 44.5mm | 約9.3mm | 41.05mm | 30.1mm | 7.1mm | 要現物確認 |
| OPF | 1.5インチ系 | 1.5" | 50.0mm | 50.05mm | 約16-22mm | 要現物確認 | 要現物確認 | 要現物確認 | 要現物確認 |
分解前に写真を残す
ヘッドパーツは、外したあとに上下の向きやスペーサー順が分からなくなると判断が難しくなります。撮影できる場合は、以下の写真を残しておくと店頭でも相談しやすくなります。
1. 組み付け前の全体
ステム、スペーサー、トップキャップ、ヘッドカバーの順番が分かる写真。
2. 上ベアリング
上側のベアリング刻印、シールの色、向き、カバーとの当たりが分かる写真。
3. 下ベアリング
下側は水が入りやすく傷みやすい場所。サビ、割れ、刻印をアップで撮ります。
4. フォーク肩
クラウンレースの有無、割り入りか一体型か、フォークコラム径が分かる写真。
症状から見る点検ポイント
| 症状 | 見たい場所 | よくある原因 |
|---|---|---|
| 前ブレーキをかけて揺するとコツコツする | プリロード、スペーサー高さ、上下ベアリング。 | 締め不足、ベアリング摩耗、コラム上端とトップキャップの隙間不足。 |
| ハンドルを切ると中心で引っかかる | ベアリングの玉当たり、受け面、サビ。 | ベアリングの打痕、サビ、締めすぎ。 |
| 雨のあと茶色い水が出る | 下ベアリング、フォーク肩、ヘッドチューブ下側。 | シール劣化、水分侵入、グリス切れ。 |
| 交換したのにガタが残る | 角度、クラウンレース、上下のサイズ。 | 36/45と45/45の取り違え、下玉押し違い、別規格の混在。 |
店頭での本音
ヘッドパーツは、車種名や年式だけで確定できることもありますが、過去に交換されていたり、同じモデル名でも仕様変更があったりします。外したベアリング、クラウンレース、写真、フレームの品番があると判断がかなり早くなります。
交換前チェックリスト
- EC、ZS、ISのどれかを確認する。
- 上側と下側を別々に見る。テーパードコラムでは上下サイズが違います。
- ベアリングの外径、内径、高さ、角度を記録する。
- クラウンレースがフォークに残っているか、一体型かを確認する。
- スペーサー順とトップキャップでプリロードがかかる隙間を確認する。
交換前に確認したいこと
インテグラルヘッドは、見た目はシンプルでも中身の規格はかなり細かい部品です。ロープロファイル、インテグレーテッド、カンパタイプなどの呼び方を入口にしつつ、最終的には現物の寸法、角度、フォーク側の形状で判断します。



